富士百五十句(『富士・まぼろしの鷹』より)

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佐々木敏光句集『富士・まぼろしの鷹』 発売中

他選 『富士・まぼろしの鷹』の句 2013.1.10

佐々木敏光・俳句個人誌『富士山麓』(月刊)


          「富士百四十句 プラス 鷹十句」(『富士・まぼろしの鷹』より) 「富士百四十句」  春 早蕨や天地一杯富士ひらく 水すでに春の音楽富士山河 牛たちは富士を仰がず春の風 空想が富士の空行く春の午後 春の富士裾野をゆけば靴が鳴る         さくやひめ 花盛り富士の天舞ふ咲耶姫 散る花に乗りて越えたし富士の空 花吹雪富士はしづかに浮揚する 蚕のごとく富士は雲吐きまゆごもる 春夕べ海月のごとく富士浮かぶ                    遠蛙富士五合目の灯がともる 震災後富士詠むジレンマ桜咲く 卒業や校歌にそびゆ富士の山 凧一つ夕陽を富士とともに浴び  富士消えて空よりしだれざくらかな 初つばめ富士の胴体両断す 大地揺る富士の空舞ふ春の鳶  巣立鳥いま飛立てり富士の空 富士五合目アサギマダラようこそようこそ 豊かなる両翼ひろげ春の富士 富士の雪ながめてをれば春がくる 富士の胸ブラジヤーみたいな春の雲 ガイアなる笑窪の一つ富士笑ふ   富士桜咲き満つ我が家にめざめけり 四月馬鹿富士は朝から隠れんぼ 春雷や闇に一瞬若き富士 花の雲富士はいつもの雲の中    二月二十三日 富士山の日 2・23の日の2・23は俺のこと?    ルート5 鸚鵡鳴く富士山麓や春眠し 若鮎の跳ねる魚梯や空の富士 野遊びや富士切株に置いてみる   夏 はればれと五月富士ある駿河かな 美しき植田それぞれ逆さ富士 汗の中富士の裸を登りゆく   入道雲富士にすわりてゐたるかな 赤く灼け富士の筋肉盛上る 雲海に富士輝ける帰国かな 川涼しこの水上は富士の地下    日本最高峰富士山剣ケ峰 炎天へ刃するどく剣ケ峰  蟻として富士山頂を目指すかな 富士山に登り天下を小とする 雷神の喜び遊ぶ富士の闇      闇の中ご来光へ向けて 光の子ら登り来るなり富士山頂 とりあへず六根清浄富士登る 爺さんといつしかなりぬ富士登山 虹たつや天の浮橋富士の空 祭笛腰を浮かして富士の山 雲海や巨船のごとく富士すすむ   万緑は富士山頂を攻めきれず 富士山の肩やはらかき若葉かな 鯉のぼり富士の渚を悠然と シヤツター街行く手大きく夏の富士  秋 火祭や炎に浮かぶ富士と死者 ニーチエ忌や超人富士は只管打坐       富士山を洗濯したる野分かな 樹海なる苔の宇宙よ小鳥来る 大沢の崩るる音か星月夜 菊の酒南山として富士を置く 富士一つ夢は無数よ星月夜 今年酒富士の水より生れけり 裏富士のとある月夜の人殺し     うしほ 富士の空潮流るる鰯雲 天高し富士の伸びゆく天の余地 鹿の目は澄み富士山は晴れてゐる 大空に大観の富士鳥渡る 星月夜銀河鉄道富士発てり 秋風や富士の言霊雲となり 冬 神の留守富士は出雲におもむかず 窓の雪胸の内なる富士へ降る 富士湧水流されまいと鴨努力 縄とびや富士いま入るまた入る 月光の集まつてくる雪の富士 雲裂けて富士の氷壁せまりくる 富士へ向け鷹放ちたるもののふよ 変人も奇人も見あぐ雪の富士 紅富士や西の夕焼紅蓮なす 寒月や富士は凛たる雪女         たた 大富士をめでつ称へつ懐手 雪を得て富士変容のはじまれり 一塊の大き静もり雪の富士  冬の日や呼吸してゐる富士の影 大鷹や余裕綽々富士を越ゆ 逆さ富士鳰頂上に頭出す 龍雲の富士をかみつく冬日かな さあ来いと両腕ひろげ寒の富士 梟の闇に太古の富士うかぶ 七五三富士の水湧く神の池 海底の海鼠は富士を夢想する 降る雪や見えねど富士を荘厳す 枯木立いつもは富士の見えぬ道 永遠が鷹として飛ぶ富士の空 枯菊や遥か墳墓のごとく富士 見上ぐるは求むることぞ雪の富士 山越えの真白き阿弥陀雪の富士 たましひや富士の空行く寒の月 新年 光こそ命なりけり富士初日 初御空大輪の富士花開く 稜線にキスして富士の初日かな 初日浴び朱に輝けり富士われら 初夢や富士の火口をよぢ登る 破魔矢もていつしか富士をさしてゐる 名所(富士) 正面に富士せまりくる帰宅かな   スサノヲもゼウスも集へ富士火口 まさか母富士の青空遊びゐる 禁煙のぼくと煙を吐かぬ富士 富士胎内人穴の闇底知れず 富士樹海おれの前には道はない    悲報 なぜだらう涙の向かうに富士がある 竹林の一愚人なり富士仰ぐ   運転や富士を見るなと叱られる   雲間より顔出す富士の遊びかな 富士深く眠るマグマやメメントモリ 異国よりきて滑落死富士は富士 閑適や富士を見てゐるされかうべ     まなこ 富士頂上眼火口へころげ落つ 戦争花嫁富士の写真が居間にある 行く雲の影絵遊びや富士に龍 宝永の口あけ笑ふ三島かな 逆さ富士湖畔歩めばついてくる この余裕よけいなプライド持たぬ富士 朝ごとの一期一会や孤峰富士 孫来る富士のあなたの都会より 大漁旗五彩はためく富士の海 影富士の先は我家のあたりかな 富士もまた青山常に運歩する 小なれど一対一ぞ我と富士 湧水や宇宙樹として富士聳ゆ おほやま 大山よ箱根よ富士よ新富士よ フジヤマゲイシヤゲイシヤはつひに縁の無し 富士サンは三つあるのと問ふ子かな 列車事故ホームで富士と過ごしけり 裏富士へうどんを食ひにいかないか 富士山の頭を撫でてやりたきよ 富士額くれなゐの口よく動く ペンキ絵と言ふか見れどもあかぬ富士    父母、本州西端に生れ没す 富士見ずに母逝き給ふ父もまた    学生時代は京都 比叡山かはゆく見ゆる富士住ひ 富士火口火の鳥飛ぶや誰も見ず    妻へ感謝することあまた この世にて会へてよかつた君と富士    地震で倒壊した石灯籠が修復された参道を山宮浅間神社遥拝所へ。    元々本殿はなく、御神体の富士を直接拝するのである          かしはで 御神体富士へ大きく拍手を 「鷹十句」(俳誌「鷹」時代の十句) 富士へ鷹駿河日和と申すべし 銀漢や黒塊として富士の山    浮世絵のごとく初富士初御空 真つ白きマストの断てり冬の富士 舞ひ上がり富士荘厳の落花かな 風死せり富士山麓にくも殺す 正面に黒き富士立つ噴井かな はればれと桃の花あり遠き富士 真輝く雪の富士なり反省す   このはなさくやひめ 初詣木花咲耶姫さまへ  (以上 百五十句)
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