ヴィヨン詩抄出 (履歴)


  ホームページに引用したヴィヨン詩をそのまま再現し、その前後の詩句を掲載していきます。更新は毎月1日、16日前後に行います。

97.3.1

パリ女に勝るおしゃべりはいない
(ヴィヨン『遺言』「パリ女のバラード」より)

フローレンスの女やヴェネチアの女は、
見事なおしゃべり女と見られている、
恋の道をちゃんとさばいてくれるし、
やり手稼業の古株と言われているわけだが、
またたとえ、ロンバルジアの女、ローマの女、
ジェノヴァの女、ピエモンテの女、サヴォアの女であろうとも、
責任もって答よう、
パリ女に勝るおしゃべりはいない。

97.2.15

泉のそばにいて、わたしは喉が渇いて死にそうだ

泣きながら笑う

(ヴィヨン『雑詩』「ブロア詩会のバラード」より)

泉のそばにいて、わたしは喉が渇いて死にそうだ、
身体は 火のように熱いが、歯をがたがた鳴らして震えている、
自分の国にいながら、遠い土地にいるようだ、
燃えさかる火のそばで、身を焦がしながら悪寒に身震いしている、
虫けらのように裸なのに、裁判長のように着飾っている、
泣きながら笑う、希望もないのに待つ、
悲しい絶望のなかに、慰めを見出す、
大いに楽しんでいるのに、楽しみはこれっぽっちもない、
権力はあるが、力も権勢もない、
大いに歓迎されながら、だれからも拒絶される。

97.2.1

何だってわかる、自分のこと以外なら
(ヴィヨン『雑詩』「軽口のバラード」より)

牛乳の中にいる蝿、その白黒はよくわかる、
どんな人かは、着ているものでわかる、
天気が良いか悪いかもわかる、
林檎の木を見ればどんな林檎だかわかる、
樹脂を見れば木がわかる、
皆がみな同じであれば、よくわかる、
働き者か怠け者かもわかる。
何だってわかる、自分のこと以外なら。

97.1.1

それにしても、去年の雪は、今はどこに?
(ヴィヨン『遺言』「昔日の美女たちのバラード」より)

教えて下さい、どこにいるのです、どんな国に行ってしまったのです、
美しいローマの遊び女フロラは、
美女アルキピアデスは、そして美しさは彼女に
まさるともおとらない、アレキサンダー大王の愛人タイスは、
川面や池の面に、
呼びかければこだまを返す、
人間の美しさを越えた水の精エコーは、
それにしても、去年の雪は、今はどこに?

96.11-12

よくわかっている、あの狂おしい青春時代に、
勉強していたら、
行い正しくふるまっていたら

(ヴィヨン『遺言』より)

 二六

よくわかっている、あの狂おしい青春時代に、
勉強していたら、
行い正しくふるまっていたら、
おれも家をもて、柔らかい寝床で寝ていただろう、
だが、何て事だ! 悪がきがするように、
学校を逃げ出した、
この言葉書きながら、
おれの心は、張り裂けそうだ。



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