第六章 太宰治『ヴィヨンの妻』

『ヴィヨンとその世界─ヴィヨンという「美しい牡」(芥川龍之介)がいた─』
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発売中、沖積舎刊『ヴィヨンとその世界  ─ヴィヨンという「美しい牡」(芥川龍之介)がいた─』 (第六章 ヴィヨンの妻)                       佐々木敏光   よくわかっている、あの狂おしい青春時代に、   勉強していたら、   行い正しくふるまっていたら  (ヴィヨン『遺言書』二六)   が、フランソワ・ヴィヨンだけは彼の心にしみ透つた。彼は何篇かの詩の中に「美しい 牡」を発見した。   絞罪を待つてゐるフランソワ・ヴィヨンの姿は彼の夢の中にも現れたりした。彼は何度 もヴィヨンのやうに人生のどん底に落ちようとした。が、彼の境遇や肉体的エネルギイはか う云ふことを許す訣(わけ)はなかつた。かれはだんだん衰へて行つた。           (芥川龍之介『或阿呆の一生』)   ヴィヨン(フランソワ)【Francois Villon】[一四三一?〜一四六三?] 一連のヴィ ヨン詩の登場人物。同時に作者とも想定される伝説的詩人。フランス文学史におけるフラン ス中世最大の詩人。中世末期パリの生れ、近代詩の先駆的存在でもある。パリ大学に学んで 高い学識を持ちながら、殺人,窃盗などを犯して,逃走,放浪,投獄の生涯を送った。最後 は殺傷事件にまきこまれ絞首刑の宣告をうけたがあやうく免れ、1463年パリから十年間追放 の刑をうけ、以後消息不明。多彩な形式の詩集『形見分け』『遺言書』、その他随時書き溜 めた『雑詩』などがある。作品のいたる所に韜晦・皮肉・嘲笑・哄笑が炸裂、と共に無頼に 満ちた青春への苦い自嘲や悔恨、死を前にしての厳粛な諦念や祈願が深い思いを伝える。 ただし、古記録にある殺人,窃盗などを犯したヴィヨンが、一連のヴィヨン詩の作者かど うかは本当のところはわかっていない。                (Francois =文字化けをさけるため、c は英字のまま)  第六章  太宰治『ヴィヨンの妻』         どこへ行かうといふあてもなく、駅のはうに歩いて行つて、駅の前の露     店で飴を買ひ、坊やにしやぶらせて、それから、ふと思ひついて吉祥寺ま     での切符を買つて電車に乗り吊皮にぶらさがつて何気なく電車の天井にぶ     らさがつてゐるポスターを見ますと、夫の名が出てゐました。それは雑誌     の広告で、夫はその雑誌に「フランソワ・ヴィヨン」といふ題の長い論文     を発表してゐる様子でした。私はそのフランソワ・ヴィヨンといふ題と夫     の名前を見つめてゐるうちに、なぜだかわかりませぬけれども、とてもつ     らい涙がわいて出て、ポスターが霞んで見えなくなりました。                        (太宰治『ヴィヨンの妻』)         (中略)   「むかし、フランソワ・ヴイヨンといふ、巴里生まれの気の小さい、弱い男が、「あ あ、残念! あの狂ほしい青春の頃に、我もし学にいそしみ、風習のよろしき社会にこの 身を寄せてゐたならば、いま頃は家も持ち得て快き寝床もあらうに。ばからしい。悪童の 如く学び舎(や)を叛き去つた。いまそのことを思ひ出す時、わが胸は、張り裂けるばか りの思ひがする!」と、地団駄踏んで、その遺言書に記してあつたやうだが、私も、いま は、その痛切な嘆きには一も二も無く共鳴したい。」                        (太宰治『乞食学生』)          (以下省略)  沖積舎 101ー0051 東京都千代田区神田神保町1ー32 TEL 03-3291-5891 FAX 03-3295-4730 ************ 沖積舎刊 佐々木敏光 『ヴィヨンとその世界 ─ヴィヨンという「美しい牡」(芥川龍之介)がいた─』 (第六章 太宰治『ヴィヨンの妻』) ************

静岡大学教育学部研究報告「ヴィヨンとその世界(九) 「太宰治、そして『ヴィヨンの妻』」」(佐々木敏光)の誤植とお詫び

  

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を通じてフランス文学における大詩人ヴィヨンの詩を知ってもらうために。
また、日本文学に興味を持つ人にも、太宰治『ヴィヨンの妻』、
芥川龍之介『或阿呆の一生』を通じてヴィヨン詩を知ってもらうために。


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佐々木敏光 著

ヴィヨンとその世界

 ─ヴィヨンという「美しい牡」(芥川龍之介)がいた─』

ヴィヨン詩抄、第六章 太宰治『ヴィヨンの妻』

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、フランス文学、モンテーニュ『エセー』(随想録)、東洋の知恵、智恵、老子、荘子、禅、論語、人生論、生き方
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